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その一言が

先日、近所のコンビニエンスストアに行った時のこと。
お昼時や夕飯時などの混む時間でもないのに
なぜか会計待ちが長蛇の列。
2台あるレジの1台がクローズになっていて
その前にはやはりお客様。
なにやら時間のかかる処理が必要らしく
こちらには列が出来ていない。
もう1台のレジを担当しているのが
どうやら新人アルバイトさんらしく、うまくさばけないようなのだ。
考えてみるとコンビニエンスストアって
レジでのお会計の他にたばこや切手などの特殊な商品があったり
お弁当などのあたためやソフトクリームを作ったりの作業があったり
支払い代行業務があったりと様々な割り込み業務があるので
同時進行で色々するのってやはりスキルが必要なのだろうなあ。

このアルバイトさんがレジの後ろで何かを始めようとした時に
もう1台のレジ前にいたベテラン店員さんが

「○○(おそらく新人アルバイトさんの名前)、そうやって次から次に
 新しいことに手をつけたらどうにもならなくなっちゃうよ」

と冷静に声を掛け

「バスケット(店内用の買い物かご)持ってこっちへいらっしゃい」

とクローズしているレジの方へ呼び寄せ
彼女にするべき仕事をてきぱき指示したのち

「お待たせして申し訳ございません」

とニッコリ笑顔でレジ業務を交代した。
急に流れが良くなる待ち行列。
さすがベテランさんだ~!

しかし新人アルバイトさんの心境を想像すると胸が痛い。
新人なのだから色々できなくて当たり前なのだが
自分の力不足が周囲に迷惑をかけている、ということが
誰よりもよくわかって情けないやら恥ずかしいやら申し訳ないやら
大変なことになっているのではなかろうか。

大昔、自分が新入社員だった頃
やはり戦力には程遠くて
(今から考えると新人ってそういうもので当たり前なのだけど)
先輩たちの足引っ張ってるよなあ、というのが誰よりよくわかるだけに
情けなくて身の置き所がなかった。
直接お客様に接する仕事でなくてもそうだったのだから
レジ前の新人アルバイトさん、今すごくつらいよなあ
可哀そうに…と、ちょっと親戚のおばさん目線に。

その時、ベテラン店員さんがレジを捌きながらアルバイトさんに声を掛けた。

「○○(新人さんの名前)、焦らなくていいから!
 時間かかっても大丈夫だから間違いのないようにね。」

この一言、なんて素晴らしいタイミングだろうと思った。
急がなきゃ、早くしなきゃと多分焦っていたであろう新人さんを
冷静にさせ一番大事なことは何なのかを思い出させる一言。
そしてベテランさんがきちんと新人さんを見守ってますよ、という
視線の暖かさを感じた。
(最後は新人さんに感じ取る余裕があったかどうかわからないが)

自分も新人時代、先輩に教えて頂いたはずのコマンドがどうしても思い出せず
忙しそうにしている先輩たちにもう一度聞くわけにもいかず
泣きそうな気分でマニュアルにしがみついていた時
隣の端末を操作していた部長がニコニコとこうおっしゃった。

「りかしさん、何そんなものにしがみついてるの。
 この部には何十という生きたマニュアルが歩いてるじゃないか。
 片っ端からつかまえて聞いてみなさい」

部長からすればわたくしの心境や考えていることなどお見通しだったのだろう。
肩の力を抜きなさい、というメッセージが涙が出るほど嬉しかった。
そしてもしわたくしがベテランの先輩に質問すれば
問題なく疑問は解決するはず、というご自分が育てた部下への信頼があったし
入社2年目、3年目の先輩に質問すれば
後輩からの質問に答えて指導するという行為自体が
先輩の経験値になる、というところまで読んでらしたのだろう。
(もちろん当時は後半部分は想像がつかなかったのだが)

知識や経験を積んでスキルが上がれば
新人の未熟さはいやでも目に付く。
でもそこで「使えない」と切り捨てるのではなく
でんと構えて、成長を促すのが先輩の役割だ。
どんなベテランだって、最初は使えない新人だった時期があるはずだから。

このコンビニエンスストアの新人さん、いい上司に恵まれたなあと思う。
深いところまでは今読み取ることが出来なくても

「少しずつでいいから、使えるスタッフになれるように頑張ろう」

と思うか

「もうこんなのヤダ!」

と投げてしまうかは本人の資質だが
できれば頑張って、何年か何十年か先
先輩から受け取ったものを後輩に渡してくれるといいな、と思う。
この職場で直接、ということではなく
別の職場だったり家庭だったり社会だったりで
先輩として後輩に渡してあげられるものはたくさんあるはずだから。

現状として、この不況の中で
気持ちはあっても新人の育成に人手も時間もかけられない
という企業はたくさんあると思う。
思いがけず、近所のコンビニエンスストアでそんなシーンを目撃して
色々なことを考えてしまった。

願わくば、この新人アルバイトさんが
先輩から受け取ったものを大切に育てて
誰かに渡すことが出来ますように。

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